DAF19に登壇した豆腐屋あこさんのスピーチ文字起こしです。（公式ブログから転載）
（出囃子：「おとうふのうた」）
（ラッパの音）
これ（ラッパ）は「とーふー」と言っています。
私はリヤカーを引いて16年目、
歩いた距離は地球3周分になります。
数値化（場内笑）。
突然ですがみなさんに質問があります。
これ（フリップ「辛」を掲げる）
何て読みますか？
ちょっと辛いなって思ってる人は「つらい」と読んでしまうし、
辛くない方は「からい」と読むし、
ラーメンが好きな方は「しん」と読みます（場内笑）。
今日はですね
「辛いことを乗り越えたら必ず光が見えるよ」
ということを一生懸命お話ししたいと思います。
よろしくお願いします。
私は小学校5年生から高校1年生までの間
ずっといじめられっ子でした。
「なにその声、ぶりっ子」
「自分のことかわいいと思ってるんでしょ」
「キモい」
毎日のように言われて
自分の声が恥ずかしくて
人と目を合わすこともしゃべることも怖くなって
できなくなっていきました。
でも私には小さな夢がありました。
[いつか満面の笑みで、私だからこそできる仕事をしてみたい」
そう思いながらも23歳まで何をやっても続きませんでした。
リヤカーを引いてラッパー吹いていると
しゃべるのが苦手な私にも、おじいちゃんやばあちゃんたちが
話しかけてくれるようになりました。
私はしゃべるのがとっても苦手だったから
みんなの話を聞くのが大好きでした。
一人暮らしのおじいちゃんやばあちゃんの話を聞きながら
リヤカーを引いてラッパを吹いて
毎週同じ曜日同じ時間に会いに行きました。
お客様たちは
「週に1回あこちゃんが来てくれるから話し相手ができて嬉しい」
と言いながら、
一緒にテレビを見たりおしゃべりをしたり
いろんなところに連れて行ってもらったりもしました。
私でも人の役に立つことができるんだ。
こんな私を認めてくれる人がいる。
そう思って、
私は少しずつ笑顔を取り戻していきました。
次第に、家族のようにやさしかった
おじいちゃんやおばあちゃんたちは段々と老いていき、
天国に旅立っていきました。
看取った人は20人以上います。
大好きなおじいちゃん家に入ると
まるで眠っているように亡くなっていたこともあります。
ご遺族が
「おじいちゃんに触ってあげて」
と言ってくださって、
冷たくなったお客様に
触れさせてもらったこともありました。
私は毎週同じ道を通っているので
玄関の前で泣きながら、
ごめんねもう会えないって分かってたなら
こんなことしたった、
あんな話をしたかった、
どうして最後に目を見てありがとうと
伝えられなかったんだろう、
悲しくて悲しくてばワーワー泣きました。
すると
看取りのドキュメンタリー映画を撮られている
長谷川ひろ子監督が
私を見かねてこう言ってくれたんです。
「あこちゃん。
あこちゃんがそんなに泣いてると
あこちゃんのことをかわいがってくれた
じいちゃんやばあちゃんたち悲しがるよ。
人は亡くなるけれども、いなくなったわけじゃないの。
あこちゃんの応援団が1人2人３人と、
後ろで応援してくれてるようになったんだから笑ってあげて」
私は過去のことや未来のことを不安に思いながら、
ぐじぐじ悩んできたけれども、
ああそうか、目の前に大好きな人がいてくれることは
あたりまえなんかじゃないんだ、
こうやって出会えていることこそが幸せなんだ。
お客様の命から大事なことを教わりました。
私が本当につらかったのはいじめとお客様の死でした。
孤独死をなくしたいという思いで、
看取り士という資格を取りました。
大好きなお客様をしっかり看取ること。
大好きなお友達や父と母を抱きしめて
天国に送りたいと心から思っています。
その長谷川ひろ子監督が
この間素敵な投稿をしていたので
みなさんにご紹介したいと思います。
「コロナは『君』なんだよ」
どういうことかと言いますと
（ホワイトボードに筆記）
「コ」「ロ」「ナ」→「君」
「恐れも不安も悲しみも
全部自分の中にあるものなんだよ。
でも自分を信じて免疫力を信じて
愛情いっぱい元気に笑っていればいいじゃない」
と教えてくれました。
「辛」い出来事に
「一」を足すと「幸」せと書くように、
私にとっての「一」は
何だったんだろうと考えてみました。
それは、私が私らしくいることを諦めなかったこと、
自分を心の奥底で信じてあげることができたこと、
だと思っています。
みなさんもぜひ、
辛いこと悲しいことを光に変えて
誰かのお役に立てるようにと、
願いを込めてお話しさせていただきました。
今日はありがとうございました。
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